2021年4月19日
株式会社ガイエ
2020年10月16日に劇場公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が従来の記録を打ち破り、史上最高のヒット作となりました。2019年にテレビ放映されていたアニメ「鬼滅の刃」の続編となる本作は、公開前から大きな話題を呼び、公開後も6カ月以上のロングラン上映となり、長期間動員ランキングの上位に名を連ねていました。
コロナ禍の現在、様々な映画が苦戦を強いられている中、本作はなぜ多くの人を映画館に呼び戻すことに成功し、異例の大ヒットとなったのか。その背景をTwitterのデータから読み解きます。
【調査概要】
ソーシャルリスニングツールNetBaseを用いて、2018年11月~2021年1月のあいだにTwitter上で投稿された、「鬼滅の刃」「鬼滅」「無限列車編」など関連ワードを含むツイートを抽出し、調査・分析を行いました。
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【目次】
・ポイント①:「鬼滅の刃」はいつから人気に火がつき始めたのか?
・ポイント②:ユーザーはアニメ「鬼滅の刃」をいつ見たのか?
・ポイント③:コラボキャンペーンの影響
・ポイント④:映画公開後のツイート数の変化
・ポイント⑤:興行収入の記録更新に関する話題化
・ポイント⑥:入場者特典の反響
・ポイント⑦:リピート鑑賞について
・ポイント⑧:つぶやいているユーザー属性の変化
・ポイント⑨:著名人の投稿
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①「鬼滅の刃」はいつから人気に火がつき始めたのか?
2018年11月から2021年1月まで、「鬼滅の刃」「鬼滅」というワードを含むツイートの数がどのように推移しているのか調べてみました。
漫画連載当初はそれほど多くなかったツイート数が、2019年4月にアニメ放映が開始された頃から少しずつ増えてきているのがわかります。そして、アニメ放送期間中にじわじわとその数を増やしていき、映画化発表のタイミングで大きく跳ね上がります。それを機にその後のツイート数が底上げされていますので、映画化発表により新たなファンを取り込んだと言えそうです。
また、2020年2月に人気ゲーム「モンスターストライク」とのコラボを発表したことも、新規ファンの獲得につながっているように見えます。映画化発表でベースアップした視聴者層がこのニュースに反応し、さらなる盛り上がりを見せています。
2020年5月、原作漫画が人気絶頂のなかで最終回を迎えたタイミングも、当然ながら大きな話題となりました。
そしてツイート数は、映画が公開されたタイミングでピークを迎えます。多くのファンが映画公開を心待ちにしていたことがツイート数から見て取れます。
② ユーザーはアニメ「鬼滅の刃」をいつ見たのか?
2019年4月にアニメ放送が開始された「鬼滅の刃」ですが、劇場版の大ヒットで社会現象となるまで、ファンをどのように獲得していったのでしょうか?Twitter上で「鬼滅の刃」「鬼滅」というワードと一緒に「見る」「見た」など視聴行動を示す言葉が含まれているツイートの数を抽出し、ユーザーがどのタイミングで作品に接触していたのかを探ってみました。
グラフのとおり、アニメ放送開始からしばらくの間(2019年4月~7月)はそれほど多くのツイートは見られなかったものの、最終回が近づく2019年8月あたりから急激にツイート数が上昇。映画化が発表された2019年9月と、その効果が最大化した10月にその数は一度目のピークを迎えます。
特筆すべきは、アニメ放送期間中よりも、放送終了後のほうがツイート数が多くなっていること。一般にその人気ぶりが顕在化したアニメ放送終了後も、多くの配信サービスで作品を楽しめるようになっていたことが、新たなファン層を生み出すことに大きく貢献したと推測できます。
③ コラボキャンペーンの影響
「鬼滅の刃」は様々な企業や商品とコラボしており、Twitter上でも大きな話題となりました。その反響の検証として、「鬼滅の刃」「鬼滅」と合わせて「コラボ」「キャンペーン」というワードを含むツイートを抽出してみました。
Twitter上で最も大きな反響があったのは、2020年2月に発表された人気のソーシャルゲーム「モンスターストライク」とのコラボでした。ソーシャルゲームとの最初のコラボであったことも、大きな話題を呼んだ理由と推測されます。
また、コラボした企業や商品のTwitterアカウントでは、“フォロー&リツイートでプレゼントがもらえる”といったキャンペーンなど、拡散しやすい施策が数多く実施されました。企業や商品とのコラボ・タイアップを通して、幅広い層へと作品が浸透していく助けになったと考えられます。
④ 映画公開後のツイート数の変化
映画公開後から3カ月間のツイート数推移を見てみると、約150万のツイートが投稿されています。その規模感を把握していただくため、興収20億円を突破した某人気アニメ映画の公開後3カ月間のツイート数と比較してみました。こちらもツイート総数は約53万と平均以上なのですが、ピーク時のツイート数を見ると、「鬼滅の刃」がいかに突出した話題となっていたかがわかります。
また、両作品とも公開時をピークに投稿数が下降に転じているのは当然の推移ながら、「鬼滅の刃」はホールド率が高く、かつ投稿数が上昇に転じる“話題化”のトリガーが幾度にもわたって現れているのがポイントと言えます。
⑤ 興行収入の記録更新に関する話題化
「鬼滅の刃」「鬼滅」と一緒につぶやかれている単語を抽出したワードクラウドを見てみると、公開2ヶ月目以降は、「興行収入」といった映画館での動員関連の単語が増えています。映画「鬼滅の刃」が興行収入記録を塗り替えていく様子はニュースメディアでも繰り返し取り上げられており、その快進撃も大きな話題となっていたことが見て取れます。
⑥ 入場者特典の反響
映画「鬼滅の刃」は公開週に合わせて、複数種類の入場者特典が用意されていました。原作者による描き下ろし漫画が収録されたコミックスや、制作会社ufotableの描き下ろしイラストカードといったファン垂涎のアイテムが配布された結果、Twitterでも大きな反響を呼んでいたようです。
「鬼滅の刃」「鬼滅」とともに「特典」という単語を含む投稿を抽出したところ、新しい入場者特典の発表と配布開始のタイミングでツイート数が大きく伸びています。ツイート数の伸びに大小はあるものの、すべての特典が話題化に貢献しており、多くの観客の動員につながったと考えられます。
⑦ リピート鑑賞について
累計2,700万人超を動員している映画「鬼滅の刃」は、複数回にわたって映画館を訪れているリピーターが多く存在すると推測できます。そこで、Twitter上で「鬼滅の刃」と合わせて「リピート」「回目」という単語が含まれているツイートを抽出したところ、約15万もの投稿がありました。週末を迎えるたびにリピート鑑賞を示すツイートが多数投稿されており、映画「鬼滅の刃」がいかに熱心なファンに支えられているかが見て取れます。
⑧ ツイートしたユーザー属性の変化
映画「鬼滅の刃」の大ヒットに貢献したのは、従来の鬼滅支持層を含むアニメファンや映画ファンのように、映画館での鑑賞に積極的な層だけではありません。普段はアニメ映画を見ることがない層も動員したことで、前人未到の大記録が生まれました。
それを裏付けるべく、ここではTwitterの自己紹介欄に記載されているキーワードから、アニメファン・映画ファン・一般層に分類して、ツイート数の推移がどう変化していったかを見ていきます。
アニメファンによる投稿シェアの推移を見てみると、アニメ放送期間から映画公開後まで、時間を経るごとに減少しているのがわかります。すなわち、「鬼滅の刃」が映画の公開を経て徐々に幅広い層に受け入れらていったと分析できます。
⑨ 著名人の投稿
Twitterにおいては、多くのフォロワーをもつ著名人や有名人、いわゆるインフルエンサーのツイートが時として大きな影響力を持ちます。「鬼滅の刃」についてツイートしているインフルエンサーを抽出してみたところ、YouTuberやタレントなど、フォロワー数100万人超えの著名人が多く名を連ねました。こうしたインフルエンサーの投稿がフォロワーの目に触れることで、大きな宣伝効果を生み出したことは間違いなさそうです。
【お問い合わせ】
ガイエでは、映画やドラマなどのコンテンツがSNS上でどのような反響を得たのかを定量、定性の観点から分析し、レポートを作成しています。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。株式会社ガイエ:info@gaie.jp